狩猟祭’00(4)





「さあ、今年の狩猟祭も後半戦に突入しました! 現在のトップはフライヤ選手の129ポイントです! まだザグナルを倒した選手はいません!! 今年のザグナルを倒すことは不可能なのでしょうか!? 今ザグナルは広場にいます!! 挑戦する勇気ある選手はいないのでしょうか!?」


その放送が流された頃にジタンは商業区に到着した。
「ザグナルか・・・そいつを倒せば優勝だな!!」
ジタンは広場へ向けて走り出した。
しかし、商店通りに着いた時、教会の方から女性の悲鳴が聞こえてきた。
ジタンが向かってみると犬を連れた女性がファングに襲われていた。
どうやらあやまって家の外に出てしまったようである。
「たすけて!」
女性の助けを求める声にジタンはもちろん応じた。
「オレに任せろ!!」
ジタンは『ミスリルダガー』で――――少々カッコつけながら――――ファングを倒した。
「ありがとう。」
女性がお礼を言った後ジタンはもちろん――――狩猟祭の最中であるにもかかわらず――――ナンパをした。
「ど〜いたしまして!! それより今度一緒に劇場でお芝居でも――――ってそれどころじゃなかったぜ!!」
ジタンは来た道を慌てて引き返していった。


その頃、ビビはファング相手に奮闘していた。
ビビもここまで着実にポイントを伸ばしていたのだ。
「『ブリザド』!! 『サンダー』!!」
ビビの黒魔法にファングは押されていた。
そして、ビビはとどめを刺そうとした。
「よーし、『ファイア』!!」
しかし、ビビの手から『ファイア』は放たれなかった。
「あ、あれ? 『ファイア』!! 『ファイア』!!」 
どうやらビビの魔力が尽きたようであった。
体勢を立て直したファングは唸り声を上げながらビビに近づいてきた。
(ど、どうしよう・・・。)
急にビビは弱気になり黙りこくったままその場から動けなくなってしまった。
その時、数日前にジタンが教えてくれたことが頭の中に浮かんできた。
『いいか、ビビ。これからは黙ってちゃダメだ。そうだな・・・・・・いざというときは自分から大声を出してみるんだ。』
『自分から・・・・・・?』
『ああ、たとえば・・・・・・。』
(そうだ、こういう時は――――)
ビビは勇気を振り絞った。
「い、いいかげんにしろよなコノヤローッ!!」
無論、モンスターであるファングにその脅しが通用するわけがなく、今までの逆襲と言わんばかりに襲いかかってきたためビビは背を向けて逃げ出した。


「? ビビ!」
劇場通りに戻ったジタンが最初に見た光景はファングに追いかけられているビビの姿だった。
ジタンは横からファングを倒したが、ビビはそれに気付かずそのまま駅の方へ逃げていってしまった。
その直後、放送が流された。
「大変です!! 二人の幼い子供がザグナルの目の前にいます!! 誰か助けてやってください!!」
「そりゃ大変だ!!」
ジタンは今度こそ広場へと向かった。


広場ではザグナルが幼い子供二人――――バンスとルシェラに今にも牙を突き出そうとしていた。
恐怖のあまり二人は動けないようだった。
そこへジタンが駆けつけた。
バンスとルシェラはジタンの姿を見て叫んだ。
「あっ! ジタン!」
「たすけて〜っ!」
「おいっ! こっちだ! おまえの相手はオレがしてやるぜ!」
ジタンの挑発にザグナルはジタンの方を向いた。
「でっ、デケェ!」
さすがのジタンもザグナルの巨体に少々脅威を感じた。
しかし、そこへ援軍が現れた。
「ジタン、助太刀いたす!」
ジタンと同じく放送を聞いたフライヤが屋根の上から現れた。
ジタンはフライヤの横に並ぶと一言断った。
「とどめはオレにささせろよ! デートがかかってるんだからな!」
「フフッ・・・・・・あきれた奴じゃな、好きにしろ。」
フライヤは苦笑したがそれを了承した。
元々フライヤは恋人を探すために参加したのであって優勝が目的ではないのだ。
ジタンは『ミスリルダガー』で、フライヤは『ジャベリン』でザグナルを攻撃した。
しかし、意外にもザグナルの皮膚は固く刃物を一切通さなかった。
そこで狙いを変更し、ザグナルの二本の牙の間にある急所(大抵こういう生物は牙に頼るあまりその部分を攻撃すると極めて脆いものなのである。)を攻撃しようとしたが、自らの弱点を簡単に攻撃させてくれるほど甘くはなく、一進一退の攻防が続いた。
やがてジタンが焦り始めた。
「やばいな、時間がねえってのに。」
「ジタン、私に作戦があるのじゃが・・・。」
「何だよ?」
フライヤはジタンに作戦を説明した。
「確かにそれなら倒せるだろうけど・・・。」
「安心いたせ。とどめはおぬしに任せるからの。」
「わかったよ。」
ジタンはザグナルに飛び乗り背中にまたがると、先程『謎の食通』が突き刺したままになっていた『ニードルフォーク』を引き抜いた。
「フライヤ、今だ!!」
ジタンの合図と同時にフライヤは『ジャンプ』をし、その傷口に『ジャベリン』を深く突き刺した。
ザグナルは堪らずに大きな鳴き声を轟かせた。
そして、ジタンがザグナルの急所を『ミスリルダガー』で切り裂いた。
その一撃でとうとうザグナルは大音響と共に地面に崩れ落ち絶命した。


「おぬしたち大丈夫か?」
フライヤは幼い二人に駆け寄った。
ジタンも後に続いた。
バンスもルシェラもこくっと頷いた。
幼い二人はジタンとフライヤのことを尊敬の眼差しで見ていた。
「このおねえちゃん、ジタンおにいちゃんと同じくらい強いのねっ! 戦う女ってステキっ!」
「『なんだよ、あんなモンスターオレたちだけでやっつけられたのに』って言えるぐらい強くなりたいな! やっぱ、シッポがなきゃだめかな?」
どうやら二人にケガはないようだった。
「勝負は決したようじゃな。」
フライヤはジタンに言った。
その時、放送が流された。
「タイムアップ! 終了で〜す! 優勝は・・・・・・ジタン選手! 275ポイント獲得で見事優勝です!」
「やったぜ!!」
ジタンは嬉しそうにガッツポーズをした。
(これでダガーとデートができる!!)
ジタンは優勝よりもそちらの方が嬉しかった。
「ジタン、すごいや!」
「ジタンおにいちゃんおめでとう!」
バンスもルシェラもジタンを賞賛した。
しかし、残念ながらガーネットとのデートの約束が果たされることはなかった。
少なくとも『今』は――――


その頃、リンドブルム城内では――――
「殿下、お喜び下さい。ジタン殿が優勝されましたぞ。」
オルベルタがシドに報告した。
「よ、よかったブリ〜。」
シドはほっと胸を撫で下ろした。
これで他国に自分の事を知られずに済むからだった。


「え〜、ここで残念ながらリタイアしてしまった何人かの選手のコメントがありますので聞いてみましょう。」


「うるさいわね! 私は今機嫌が悪いの!! 狩られたくなかったら近づかないでちょうだい!!」
(失礼しました。)



「祭りにはあんまりおいしいものはなかったアルな、ワタシはやはり沼に戻ってカエルを食べるアルよ。」
(沼? カエル?)



「知らないでしゅ、ボクはお姫様から眠り薬を入れてほしいだなんて頼まれてないでしゅ!」
(何の事でしょうか?)


「ギルの兄貴、見事にやられてしもたなあ〜。」
「エンキドゥ、もうその話はやめだ。こうなったらオレはトレノで大儲けしてやる!!」
「それって、スリのことやろ?」
「スリなんてそんなセコイ真似が出来るか!! オレはトレノでもっとどでかい男になってやるぜ!!」
(・・・まともなコメントが得られませんでした。)
しかし翌日、結局4本腕の男はトレノでスリとなりお姫様からギルをすって『パワーベルト』を買ったまでは良かったが、護衛の騎士にばれてしまいそれを渡してしまうことになる。


「ほとんどの選手の皆さんが残念(?)がっていたようですね。今年の狩猟祭も少々アクシデントはありましたが無事に終わりました。来年度は一体誰が優勝するのでありましょうか? ではまた来年お会いいたしましょう。さようなら〜!! あっ!! わたくしの○×クイズもよろしくお願いいたします。森の中に入ればいつでも挑戦できますのでやってみたい方はぜひどうぞ!! (但し、命の保証はしませんよ〜!)」

                          <Fin>
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