Gaia Times
1803年 8月30日
『不思議の国のダガー』本日発売!
 人気漫画家の亘莉ススムさんを中心として製作された絵本『不思議の国のダガー』が本日ついに発売された。内容は女王陛下が以前御覧になった夢を基にしたファンタジー性の溢れる児童文学作品とのことで、現在世界中の書店には予約者が老若男女・種族を問わず多数殺到しており、タタリパワーの効果もあって(?)初日での完売が確実と見られている。
 さらに亘莉ススムさんは、すでに続編の『
鏡の国のダガー』を製作中であることを発表しており、こちらも熱烈なファンの間で早期の発売を期待されている。
 なお、この二作品のパロディ絵本として『不思議の国の角子(●どっこ)』と『鏡の国の角子(か●っこ)』が発売されるのでは? との噂があるが、製作者サイドはこれについてはノーコメントを通している。

絵本の一場面より
画:亘莉ススムさんほか、人気イラストレーターの皆さん
あらすじ
 とある国の幼いお姫さま、ダガーは中庭で家庭教師のトット先生の授業を受けていると、手紙と時計を持ったサルにもネコにも見えるウサギが「
デートに遅れる〜!」と慌てながら駆けて行く姿を目撃します。興味を惹かれたダガーはそのウサギを追いかけると、ウサギは木の根元にある輝く穴の中に入っていってしまいました。ダガーもその穴に飛び込んでみると、そこには空を飛ぶ大きな大きな船や、地中を走り回る巨大な虫、ドジな双子のピエロ、年中お芝居ばかりしている盗賊団、青一色の世界、ネズミだらけの国、ダガーよりも幼い女の子が治める国、などといった不思議な人々が住む不思議な世界が広がっていたのでした。はたしてダガーは元の世界に戻ることができるのでしょうか?
主な登場人物
ダガー=このお話の主人公でとある国のお姫さま。毎日何も変わらず過ぎていく日常に退屈している。

トット先生=ダガーの家庭教師。真面目に授業を受けてくれないダガーに手を焼いている。

ウサギのジタン=人によってはサルにもネコにも見える不思議なウサギ。ダガーを不思議の国に案内した張本人。物語の後半でデートの相手がダガーであるという不思議な展開になる。

チェシャ猫のビビ=道に迷ったダガーの前に登場し道案内をしようとするが、高い場所が苦手のため木から降りられずに泣き出してしまい、結局ダガーの助けを借りることになる。

いかれ帽子屋のサラマンダー=以前はまともな帽子屋だったが、自分にピッタリのサイズの帽子が無いことに気付いて頭がおかしくなる。現在は三月ウサギのクイナと一緒にいかれたお茶会を楽しんでいる。終盤のダガーの裁判では、何故か自分も屋敷から大金を盗んだ罪で裁判にかけられてしまう。

三月ウサギのクイナ=八人の中で自分だけ誕生日が不明で誰にも祝って貰ったことがないため頭がおかしくなる。現在はいかれ帽子屋のサラマンダーと一緒に毎日いかれた誕生会を開いている。

眠りネズミのスタイナー=昔は現実世界で暮らしていた生真面目な騎士だったが、この世界に迷い込んでからというもの非現実的な物ばかりを見続けてしまったがために、人間であることをやめてネズミの姿になる。ブリ虫が苦手で名前を聞いただけでパニックになるが、ピクルスの匂いを嗅ぐと元に戻る。

ハートの女王エーコ=不思議の国を治める6歳の女王。FF9のヒロインの座とジタンをダガーから奪うため、彼女との縄跳び勝負を提案する。

トランプ兵士のフライヤ=女王に忠実な兵士。女王は赤色を好むため、鎧兜を赤色に染めている。

芋虫のクジャ=醜い姿の自分に嫌気がさしており、早く美しい蝶になりたいと願っている。その後、念願叶って成虫になるものの、その姿は蝶ではなく、さらに醜い蛾であった。

双子のゾーンとソーン=中盤に登場して、ダガーにお話を聞かせる双子のピエロ。その内容は強いものに媚びへつらい弱い者をいじめ抜くという、聞くに堪えないもので、怒ったダガーからバハムートを召喚される。

ジタン・トライバル=ガーネット女王の恋人。女王が夢から覚めると、彼の膝枕でずっと眠っていたことを教えられる。ウサギの姿の彼を追いかけたという夢は、彼のことをウサギみたいに可愛いと思っている一方で、突然自分の前からいなくなってしまうのではないかという不安の表れでもある。
ヒツジッチ先生による歴史講座(3)
 
マデリーン(1376〜1401)と教会の権威失墜
●マデリーンは1389年の第九次リンドブルム戦役において、僅か9名の兵士を率いて活躍したとされるアレクサンドリアの女将軍。当時リンドブルム軍に追い詰められていたアレクサンドリア軍を勝利に導いたことで『救国の英雄』と称えられ、今でもアレクサンドリアの女性の尊敬の的となっているが、彼女の前半生や25歳で死んだ理由についてはこれまで歴史上の謎とされていた。しかし、最近になって発見された古文書を解読した結果、彼女は当時王国と並ぶほどの勢力と権力を誇っていた教会の
スパイだったことが判明した。

●統一王国が崩壊する以前から存在していたこの由緒ある教会(『安息日』などの暦を制定したのもこの教会)は、王国崩壊後からの度重なる戦乱の中で救いを求める民衆を相手に教えを広めて民心を得、第九次リンドブルム戦役を影から操っていたとされるエルネスト4世が教皇に選出されてからは王族の中からも信者が出たという。このエルネスト教皇はアレクサンドリアの事実上の支配者になることを企んでおり、孤児だったマデリーンに武芸と魔法を仕込んで神殿騎士としてアレクサンドリアに送り込んだ。そしてアレクサンドリア軍の勝利に大いに貢献したマデリーンは、その功績により翌年14歳にして近衛兵長に任命される。その後も教会からの後押しもあって功績を挙げ続け、18歳で将軍に。そして、アレクサンドリアの歴史上最年少となる25歳という若さで騎士団団長という軍事の最高責任者に推された。ここまでは教皇の思惑通りだったのだが、この時マデリーンの心の中では迷いが生じていた。自分を拾ってここまで育ててくれた教皇への恩と、城内では独りぼっちだった自分に母親のように優しく接してくれた女王への忠誠、そして初陣の時からずっと傍にいてくれた年上の男性騎士アデルバートへの愛情との間で板挟みになっていたのである。悩んだ末に、彼女は教会ではなく女王への忠誠と、アデルバートへの愛を選び、教会との決別を決意する。そして女王に教皇の企てを全て打ち明けると、アデルバートと共に教皇と話し合いを試みようと向かうのだが、彼女の裏切りに気付いていた教皇は、教会内に入ってくる二人を配下の神殿騎士に襲わせた。最後の最後まで教皇を信じていたマデリーンは、怒りと悲しみに駆られながら教皇目指して剣を振るうが、多勢に無勢で次第に追い詰められ、とうとうアデルバートが敵の凶刃に斃れてしまい、自らも致命傷を負ってしまう。ところがその時、女王から派遣されたマデリーン配下の兵士が到着、さらに彼女を慕っていた民衆が女王の声明を聞いて一斉蜂起し、形成は完全に逆転する。マデリーンは幼い頃から祈りを捧げてきた女神像の前で、なおも悪あがきをする教皇を一撃の下に斬り伏せると、アデルバートの遺骸に「
来世で一緒になりましょう」と囁き、彼にすがるようにして果てたのであった。

●その後、女王は教会を解体まではさせなかったものの、自治権と発言権を剥奪して事実上の政教分離を徹底させた。あくまで教皇の陰謀を信じなかった教会関係者や信徒たちも、数ある証拠の公開と提示によりとうとう事実を受け入れ、大陸各地で信仰を捨てる者が次々と出始めた。そして年月が流れると人々の宗教的意識はさらに薄まり、
教会も威信を取り戻せないまま遂に解体され、各地に施設と司祭を残すのみとなり、現在では街中での教義もあまり見られなくなっている。









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