テラの暗殺者(プロローグ)


1794年 3月?日 PM17:00


ここはガイアとは別の次元にある世界テラ――――
そこにある浮遊城パンデモニウムで一人の黒ずくめの老人が一人のジェノムに命令を下していた。
「よいなキリオよ?」
「・・・・・・。」
キリオと呼ばれたジェノムは返事もせず軽く頷いただけだった。


キリオは見た目17、8歳の少年の姿をしており、後ろ髪を長く伸ばしたオールバックの黒髪に老人と同じ黒ずくめの服と黒マントをしていた。
そして、その黒い瞳は見た者をぞっとさせるほど冷たいものだった。
キリオは1777年に黒ずくめの老人――――テラの管理者であるガーランドによって創られた。
前年に創られたジェノム――――クジャと同じく偶然によって生まれたジェノムである。
しかし、キリオはクジャとは正反対で自分の意思や感情が他のジェノムよりもないに等しく、命令されたこと以外は何一つしなかった。
そのため、ガーランドも廃棄を考えたが、キリオはクジャに劣らぬほど魔法を早く覚え、さらに身体能力においてはクジャをも上回っていた。
ただ、キリオは魔法よりも剣を使うのを好んでいたが。
(ちなみに服装はクジャと対比するためガーランドがそうした。)
そのため、ガーランドはキリオの詳しい戦闘能力を調べるまで廃棄せず冷凍保存するという手段をとった。
クジャにはすでにキリオを廃棄したと言っておいた。
クジャがキリオを危険視し破壊させないために――――


そして、月日は流れ、
1787年、クジャは己の後継者とガーランドに目されていた自分の兄弟ともいえるジェノムをガイアに捨てたためテラへの出入りを禁じられた。
1790年、召喚士の存在を危険視したガーランドはクジャに命じてマダイン・サリを滅ぼさせた。
しかし、1794年、ガーランドはマダイン・サリに未だ十数人の召喚士が生き残っていることを発見した。
クジャに命じてもよかったのだがガーランドはキリオの実戦能力をテストするにはよい機会と考えた。
そして今、キリオは永い眠りから目覚め、一つの任務を受けた。
『マダイン・サリに生き残っている召喚士の全滅』という任務を――――


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