テラの暗殺者W(1)


1800年 2月6日 PM23:20


ここはアレクサンドリア――――
アレクサンドリア王女、『ガーネット・ティル・アレクサンドロス』が女王に即位する3日前の夜、
突如『バハムート』が現れ家々を破壊し、町中に霧の魔獣が現れ人々を襲い始めた。
これはクジャの仕業だった。
ガーネットとエーコが『宝珠』によって『アレクサンダー』を召喚し『バハムート』を撃退したが、
それこそがクジャの狙いだった。
クジャはインビンシブルを呼び寄せ『バハムート』と同じように『アレクサンダー』を手に入れようとしていたのだ。
しかし――――


アレクサンドリア上空にあるインビンシブル船内――――
「少々度が過ぎたようだな、クジャよ・・・・・・。今までおまえがガイアでどう暴れようと好きなようにさせて来たが・・・・・・己が存在の意味すら忘れるようになったおまえを見過ごすことはできん・・・・・・。おまえの刃向かおうとする力の強大さを知るがいい・・・・・・。そしてジタン、おまえもだ・・・・・・。」
そしてガーランドは連れてきたジェノムに命令を下した。
「ゆけ、キリオよ。」
キリオは転移装置からアレクサンドリアへと降り立った。


その真下のアレクサンドリア大通り――――
「!? なぜ・・・・・。なぜ動かん、インビンシブル!! 『バハムート』を狂わせたように、『アレクサンダー』の魂をも操り我が物にしろ! まさか・・・・・・ガーランドか!! バカな!! 奴が自らガイアにおもむくなどと・・・・・・。そんなことが・・・・・・、僕の計画が読まれていたというのか!? それならどうしてインビンシブルを!? ま、まさか・・・・・・。」
クジャはある結論に行き当たった。
「まさか、僕に渡るくらいなら城ごと『アレクサンダー』を破壊する気か!?」
クジャの予測通りインビンシブルのエネルギー放出装置にはそのエネルギーが集中されているようであった。
「そうはさせるか!! 来い銀竜!!」
クジャは銀竜を呼び寄せインビンシブルに侵入しようと企てた。
しかし、銀竜がクジャの横に着地したその瞬間、銀竜の首と胴が離れ、銀竜は絶命した。
「何だと!?」
クジャは銀竜の骸から向こうを見ると、
そこには何年も前にガーランドが廃棄したと言っていたジェノム――――キリオが『カオスブレイド』を右手に構えて立っていた。
「フフフ、なるほど。僕はずっとガーランドに騙されていたわけか。」
クジャは苦笑した。
キリオはクジャに無言のまま斬りかかってきた。
その素早さにクジャは狼狽しながらも何とか避けた。
「くっ! どうやらガーランドやキミは僕を本当に殺す気みたいだね。いいだろう、キミと僕、どちらが優秀か教えてあげるよ。」
クジャは『サンダガ』を唱えた。
キリオはそれを難なく、しかも最低限の動きで避けた。
「何っ!? ならばこれならどうだ!! 『グラビデ』!!」
『グラビデ』は対象に強力な重力波を浴びせることによって体力を削る魔法だが、キリオには応えないようだった。
キリオは何事もなかったかのようにクジャに近づいてくる。
「くっ!! 『フレアスター』!!!」
クジャは自分の知っている最高の魔法をキリオに放った。
とてつもない爆発がキリオに降り注ぐ。
「やったか・・・。フフフ、所詮、僕以上の存在などいるはずがな――――。」
クジャの言葉はそこで中断した。


次の瞬間キリオが爆風の中からいきなり飛び出しクジャに真一文字に斬りつけてきたからだ。
さすがのクジャも避けきれず致命傷は免れたものの腹に深い傷を負った。
「ぐっ!! こんなバカな!!」
キリオは全くの無傷だった。
『グラビデ』も『フレアスター』も相手の魔力に応じて命中率やダメージが変化する。
つまり、キリオの魔力はクジャを上回っているということだった。
キリオは続けてクジャの首を刎ねようと剣を振り上げるが、クジャはもう一度『フレアスター』をキリオに放った。
再びキリオに向かって爆発が起きる。
無論、キリオは少しの傷も負わずそのまま剣を振り下ろす。
だが剣は空を斬った。
見るとクジャの姿は消えていた。
クジャは『フレアスター』を自分が逃げるための時間稼ぎに使ったのだ。
キリオは辺りを見回したがクジャを発見できなかった。
キリオはクジャを探すのを諦め、城の方へと歩き出した。
ガーネットの抹殺という別の任務を遂行するために――――

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