テラの暗殺者T(3)


1794年 3月?日 PM23:30


「こ・・・これは一体どうしたことじゃ!?」
長老がモーグリたちと共にマダイン・サリに帰ってきた時に最初に見た物は、無惨に殺された村人の死体だった。
広場の方はもっと酷く5、6人が折り重なって死んでいた。
召喚壁の方ではコーネルが仰向けになって生き絶えていた。
「誰か・・・誰かおらんのか!!」
彼は自分の家へと向かった。
誰かが生き残っている事を願いながら――――


しかし、自分の家の中に入ったとたん彼は崩れ落ちた。
そこでも村の女たちが死んでいたのである。
「いったい誰がこのようなことを・・・。生きておるのはわしだけなのか・・・。」
しかし、彼はふと気がついた。
エーコとその母親の姿がなかったのである。
「もしや・・・!!」
彼は部屋の奥へと入っていった。
まだ探していないのは秘密の部屋だけである。
秘密の部屋は台所の影になっており外部の者には簡単に発見されない。
だから、この村に伝わる『宝珠のかけら』もここに隠してあるのだ。


秘密の部屋に入るとそこにはエーコの母親が壁に背を預けて座っていた。
その腕には何か恐ろしいものから守るようにしっかりとエーコを抱きかかえていた。
「よかった。無事じゃったか。」
だが、二人に近づいた時に彼は愕然とした。
母親の方はすでに息がなかったのだ。
しかし、エーコはすやすやと安らかに眠っていた。
それで彼は理解した。
母親は傷つきながらも娘を守りここまで逃れ、そして力尽きたのだと。
「よくぞ、エーコを守ってくれた。エーコのことはわしの命がある限り不自由はさせん。だから安心して眠ってくれ・・・。」
彼はエーコを抱きかかえながら言った。
しかし、彼もエーコが6歳の時に例の原因不明の傷によりこの世を去ることになる――――


「予想以上の結果を出したようだな。」
キリオを再び冷凍睡眠にかけた後、ガーランドはキリオの戦闘能力を分析した。
ガーランドは当初、召喚士たちを全滅させたとしてもキリオも無事ではすむまいと思っていた。
最悪の場合相討ちになるかもしれないとも。
だが、キリオが短時間のうちに剣一本とわずかの魔法のみで、しかも不意討ちとはいえ無傷で召喚士たちを全滅させたことにさすがに驚きを隠せなかった。
「こやつは今回のような任務に向いておるようだな。」
ガーランドはそのためキリオを廃棄することの中止を決定した。
「こやつにクジャほどではないにしろ、意思や感情がもう少しあればクジャの代わりになったものを・・・。」
それだけがガーランドにとって、キリオの唯一の欠点だった。

「だが、こやつならば私の代わりになるやもしれん。」
そこで万一、テラとガイアの融合の前に自分が死んだ時のため、
ガーランドはキリオの頭の中に、あるリミッターを設けた。


そして、さらに時は流れて1800年 1月23日。
ガーランドは召喚獣によってクレイラが壊滅したことを知った。
クジャがそれに関係し、いずれは自分に刃向かおうとしていることもわかっていたが、
ガーランドは魂を必要としていたために、クジャをもうしばらく泳がせることにした。
それよりも、召喚士の生き残りがまだいることの方が問題だった。
ガーランドはその召喚士の居場所を突き止め、25日、キリオを再び目覚めさせた。
今回命じた任務も以前と同じ『召喚士の抹殺、また邪魔する者も同様にせよ。』とのことだった。


つまりキリオの任務は――――


アレクサンドリア王女 『ガーネット・ティル・アレクサンドロス』の抹殺であった――――

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