2・アレクサンドリア(タンタラス上演時)
ビビ:『初めてのアレクサンドリアで』
今夜のお芝居が楽しみだなあ。
ボクは今夜のお芝居を観にアレクサンドリアにやって来た。
ボクがトレノ以外の街に来たのはこれが初めてだ。
トレノだってボクのおじいちゃんといっしょにしか行くことがなかったけど・・・。
でも、そのおじいちゃんが死んじゃってからボクは初めて外の世界へ飛び出した。
そしてトレノで今夜のお芝居のことを聞いてお芝居のチケットを買ったんだ。
チケットはとても高かったけどおじいちゃんがボクのために貯めていたお金で何とか買うことができた。
だけど、チケットを買ったらアレクサンドリア行きの飛空艇に乗るためのお金が無くなっちゃった。
だからマルコっていう人に頼んで飛空艇に乗せてもらったんだ。
そしてアレクサンドリアに着いたボクはびっくりした。
人が大勢いるし、お店もたくさんあってとても賑やかだったからなんだ。
トレノなんて比べ物にならないくらいだよ。
だけど、チケットブースでスタンプを捺してもらおうとしたら、それが偽物だって言われちゃった。
お芝居楽しみにしてたのに・・・。
がっくりしながら歩いていたら、通りでボクにぶつかってきた男の子が芝居を見せてやる代わりに子分になれって言ってきた。
思わず『わかった。』って言っちゃったらその男の子はハシゴを持って尖塔の中に入っていった。
男の子が言うにはハシゴを使って屋根を伝いながら城に忍び込むんだって。
ボク、高い所が苦手なんだけどなあ・・・。
でもお芝居を観るためだ、がんばろう。
屋根を恐る恐る伝っていると男の子がボクの名前を訊いてきた。
ボクが自分の名前を教えたら男の子も自分の名前を教えてくれた。
男の子はパックっていった。
そのあと、パックが『これからもヨロシクなっ!』ってボクに言ってくれて何だかうれしくなった。
ボクに初めての友だちができたって思ったんだ。
ひとりで観るより友だちといっしょに観た方が楽しいよね?
今夜のお芝居が本当に楽しみだなあ。