Resistance(7)





スタイナーとレイガンの戦いは続いていた。
スタイナーが未だ優勢であったが何度斬ろうとダイヤでできた鎧に阻まれ決定的な打撃を与える事ができず徐々に疲労の色が見えてきた。
このままでは、いずれレイガンの剣の餌食になるのは確実だった。
「どうしたスタイナー、ずいぶん疲れてきているようだな。さっきは偉そうな事を言っていたが、ブラネ様の恩を忘れて城に攻め入ってきたお前こそ騎士の使命を忘れたのではないか!?」
レイガンのその発言にスタイナーはきっぱりと反論した。
「それは違うぞ! 騎士の使命とは国を、そして弱き者を守る事・・・。弱き民衆を虐げているブルネオの犬となった貴様は間違っているのである!!」
「ほう、お前が正しいと言うのであれば私を倒す事で証明してみせろ!!」
(まあ無理だろうが。)とレイガンが思った瞬間、スタイナーが構えていた剣が光り始めた。
「では、そうさせてもらうぞ! 『アーマーブレイク』!!」
スタイナーはレイガンに向けて『アーマーブレイク』を放つと『ダイヤアーマー』にヒビが入った。
「な・・・何だと!?」
レイガンが驚愕している隙にスタイナーは続けて彼に向けて『暗黒剣』を放った。
その一撃で『ダイヤアーマー』は砕け散り、レイガンはその衝撃をまともに受けて吹き飛び壁に叩きつけられた。
「・・・バ、バカなこの鎧が・・・。」
レイガンは壁に寄りかかったまま全く信じられないといった表情をした。
「どうだレイガン、強力な装備のみに頼った戦闘が如何に脆いかよく解ったであろう!!」
スタイナーがそう言い切った。
「ぐぅ・・・この借りは必ず返すぞ!!」
捨て台詞を残してレイガンは逃げ出した。
スタイナーは一瞬追いかけようとしたがすぐに思い直し、階段を駆け上りベアトリクスたちの後を追った。


その頃、ベアトリクスは能力を引き出されたルーシアの剣の前に押され気味となっていた。
「どうかしら私の真の強さは?」
ルーシアの額の数字は『3』となっていた。
(こうなれば一気に勝負を着けるしかない。)
そう考えたベアトリクスは『ストックブレイク』を放った。
だが、長く彼女の下でその技を見てきたルーシアはそれを難なくかわしてしまった。
「フフフ、確か『ストックブレイク』が破られたのはこれで2回目だったわよね。」
ルーシアは余裕の笑みを浮かべた。
「くっ! ならばこれならどうです!!」
ベアトリクスは自分の最強の技である『ショック』を放とうとした。
だが、ルーシアはそれが出される前に『ブリザラ』を唱え、彼女にその時間を与えようとしなかった。


両者は再び相手との距離を置き膠着状態となった。
「もう少しあなたの苦しむ顔を見たかったけど、もう時間がないからそろそろ終わりにさせてもらうわ。」
「・・・ルーシア、一つ聞かせてください。あなたは今のこの国の現状を見て騎士として何も感じないのですか!?」
突然ベアトリクスが訴えかけた。
彼女に僅かでもこの国を思う気持ちがあることを願って言ったのだった。
だが――――
「何よ偉そうに、私はあなたさえいなくなればそれでいいの。国なんて知った事じゃないわ。」
ルーシアのその言葉にベアトリクスは完全に失望し、そして怒りを覚えた。
「・・・この国のためではなく、私怨のために剣を振るうとは・・・。やはり私はあの時あなたを処罰するべきでした。あなたに剣を持つ資格などありません!!」
「うるさいわね、お説教はたくさんよ!!」
ルーシアはこれで終わりしてやると言わんばかりに剣を振り上げて突進してきた。
「ルーシア、私が全ての技をあなたに見せたと思ったら大間違いですよ!」
ベアトリクスは『クライムハザード』を放った。
「なっ!!!!」
ルーシアは始めて見る技の前に対処する暇もなく、その一撃だけで倒されてしまった。
『クライムハザード』は『ストックブレイク』が11年前、ある男に(まぐれではあるが)破られたために新しく開発した技であった。(その男に対して使ったのはつい3日前であるが。)
ベアトリクスはすぐに倒れているルーシアに駆け寄り『呪いの指輪』を取り外すと足で踏みつけて粉々にした。
そこへ、11年前に『ストックブレイク』を破った男――――スタイナーが息を切らせながら駆けつけた。
彼は倒れているルーシアを見てベアトリクスに尋ねた。
「・・・こやつは死んだのか?」
「・・・いいえ、気絶させただけです・・・。一応、私の部下でしたから・・・それより急ぎましょう!」
二人は女王の間へと足を進めた。


その頃、外の戦闘の方はすでに終わろうとしていた。
ビッグスはバクーに倒されたため、指揮官を失った寄せ集めの兵は次々と逃走を始めたのだった。
「ど、どうするんやギルの兄貴!?」
「バカッ! 逃げるに決まってんだろ!!」
この二人も慌ててトレノへ逃げ出していった。


一方――――
「スタイナー・・・これで済むと思うなよ・・・。」
レイガンは城の右塔へと逃れていた。
そこへ、ウェッジがやって来て戦況を報告した。
「レイガン様、城外の兵も城内の兵も壊滅いたしました!」
「な、何だと! ゾーンとソーンはどうした!?」
「それが、あの二人は負けを悟ると真っ先に逃亡いたしまして・・・。」
そこへガリオンが姿を見せた。
「どうやら負けみてえだな。」
「ガリオン、お前今まで何をしていた? まあいい、早く裏切り者どもを始末するのだ!!」
だが、ガリオンはレイガンの命令に従おうとしなかった。
「やなこった。オレは割に合わねえ仕事はしない主義なンだ。」
そして彼はそのまま立ち去ろうとした。
「な、お前までもが・・・!」
レイガンは『ダイヤソード』を抜いてガリオンを切り捨てようとした。
「この裏切り者――――」
その瞬間、レイガンの首と胴が離れた。
「うるせえンだよ・・・。」
ガリオンが愛用の剣『デスブリンガー』で彼の首を刎ねたのだった。
それを見たウェッジは恐怖のあまり声も出せないままその場から逃げ出した。
その後、ガリオンは城内から忽然と姿を消した――――

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