Resistance(2)





 地下通路の出口は、都合の良いことに裏通りのさらに目立たない場所へと通じていた。
 マーカスは外に出ると、早速小劇場を探し始めた。
「手紙に書いてあった場所は確かこの辺りのはずっスけど・・・。」
 しばらく探し歩いてようやく『ルビィの小劇場』という看板を発見した。
「ここっスね。」
 階段を下りると青い髪の女性がいた。
 青い髪の女性――――ルビィはマーカスの姿を見ると目を輝かせた。
「マーカス、あんた無事やったんか!!」
「ルビィ、あいさつは後回しっス。」
 マーカスはルビィと一緒に小劇場を経営しているアシュリーまで引っ張り出してスタイナーたち三人を地下通路から担ぎ出し小劇場まで運び込んだ。


「とりあえず三人とも眠ったようやけど・・・一体これはどういうことやのん?」
 三人を一通り治療して寝室に運んだ後(もちろん部屋は別々だ。)ルビィは二人に事情を尋ねた。
「俺もよくわからねえんだ。マーカス説明しろよ。」
「あの・・・私にも説明してください。一体どういうことなんですか?」
 マーカスはアシュリーを含む三人に(一部はブランクも知っているが。)、
劇場艇プリマビスタが墜落した後、ジタンがガーネットを助けるためにタンタラスを抜けた事、ブランクが今日まで石になっていた事、
 自分はブランクを助けるためにトレノに行く途中でガーネットとスタイナーに出会って協力してもらった事、
『白金の針』を手に入れたのはいいがアレクサンドリアに着いたとたん捕まってしまった事、脱獄してジタンたちと再会した後、ブランクを助けに向かった事、
 ブランクを元に戻し、二人ですぐにアレクサンドリアに戻ってジタンたちを逃がした後、スタイナーたちと合流してこうなった事などを説明した。
「そういうことやったんか。」
「アシュリーさん、迷惑はかけないっスから俺たちをしばらくかくまってくれないっスか?」
「そういう事情であれば喜んで。」
 アシュリーは快く了承した。
 彼だけではなく多くの国民は最近のブラネの政治――――特にブルメシア侵攻には疑問を持っていたのであった。

 今度はルビィとアシュリーがブランクたちに説明を始めた。
 ルビィはあの日、ブラネによって砲撃を受けたプリマビスタから振り落とされてしまったのである。
 その後、しばらくは城下町の酒場で途方に暮れていたが、その酒場の元マスターであり裏通りに小劇場を作ろうとしているアシュリーに誘われてここで働くことになったのだった。(実際は酒代の持ち合わせが無く、彼に訴えられるところだったのだが代金の換わりに一人芝居を見せたところそれが好評で誘われたのだが。)


 その夜、ブランクとマーカスは今後どうするか相談を始めた。
 ルビィは、フライヤとベアトリクスの包帯を取り替えに寝室に入っている。
「兄キ、俺たちこれからどうしたらいいっスかね?」
「さあな、いつまでもここに隠れている訳にもいかねえし・・・ボスが来るのを待つしかねえな。」
「ジタンさんたちはトレノに行ったっスからボスたちと合流しているはずっス。ボスにも俺たちの状況を連絡しておいたっスから姫さんをトレノに残した後でここに来るはずなんスけど・・・。それにしても兄キ、石になって大変だったっスね。」
「まあ・・・意識は無かったからそれほど大変という訳でもなかったけどな。それにしてもルビィの奴、俺が石になっていた事を聞いたら他人事だと思って大笑いしやがって・・・。一度自分がなってみろってんだよ! あいつは無駄な化粧しなくていいし、俺はうるさいのがいなくなるし一石二鳥だぜ。」
「あ、兄キ・・・。」
「何だよ、急に青い顔になって――――ってまさか・・・。」
 ブランクは自分の背後に今話題になっている女性が髪の毛を逆立てながら立っていることに気付いて再び石になってしまった――――


 数分後、数人が階段を下りてくる足音がした。
「まさか、城からの追っ手では・・・!」
 アシュリーの言葉にマーカスは剣をいつでも抜ける体勢のまま扉へと向かった。
 ドンドンと扉を叩く音の後、中年の男の声がした。
「おーい!! ここを開けてくれねえか!?」
 マーカスはその声を聞くとすぐに扉を開けた。
「おうマーカス!!」
 扉の向こうに居たのはタンタラス団の頭領バクーだった。
 そして彼の後ろにはシナとゼネロとベネロもいた。
「ボス、待ってたっスよ! ところでジタンさんたちは?」
「ジタン? いや会わなかったが・・・。まあその話は後だ。どうやらお取り込み中らしいしな・・・。」
 マーカスの後ろではブランクがボロボロになって床に倒れており、ルビィが真っ赤な顔をして怒り狂っていた。


 ルビィの怒りが静まった後、話し合いが行われた。
「じゃあ、ジタンさんたちには会えなかったんスね?」
「ああ、おめえからの手紙は受け取ったんだがな・・・まあ、あいつは悪運が強えから心配はいらねえだろ。」
(この時ジタンたちはトレノを通り過ぎてピナックルロックスにいた。)
 そして、バクーは自分たちのこれまでの行動を説明し始めた。
「俺たちがアレクサンドリアに着いたのが夕方だったんだが、街の門が閉じられてて今まで入れなくてな。だが都合よく俺たちと同じように街に入れずにいた男と女が門番といざこざを起こしてよ。何だか知らねえが女の方が大斧を振り回しながら『私たちはブラネ女王に呼ばれたのよ!!』て言ってやがった。とにかく、そのどさくさに紛れて俺たちは街に忍び込めたんだ。」
「ボス、それで外の様子はどうだった?」
 ブランクが聞いた。
「さっきまで兵士たちが街中に溢れていたんだが急に城に戻っていきやがった。たった今飛空艇が発進したからな、多分ブラネが兵士を連れてどっかに出掛けたんだろうな・・・。」
「ブラネはどこに行ったんスか?」
「さあ、俺には見当もつかねえな・・・。」
「ボス、ところでウチらこれからどうしたらええのん?」
「今のところはどうしようもねえな・・・。まあ、今日はもう遅えからな、明日のことは明日考えようぜ。」
 バクーはそう締めくくり、その日の話し合いは終わった。
 アシュリーは人数が増えたにもかかわらずタンタラス全員をかくまうことを了承してくれた。
 ブランクたちは寝床に入るとあっという間に眠ってしまった。
 だが、バクーは考え事をしていたためなかなか寝付けなかった。
 彼はブラネがどこに行ったかのマーカスの質問にわざと知らないと答えた。
 だが、本当はブラネがどこかの国を攻撃しに行ったのだろうという大体の予想がついていたのだ。
 さすがにその国を攻める可能性は否定したかったがブラネが攻撃する国はもうそこしかなかった。
 自分たちのアジトがあるリンドブルムしか――――


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