旅立ち


1800年 1月7日


数日前に、ボクのおじいちゃんが死んだ。

おじいちゃんはボクを本当の家族のようにやさしく育ててくれて、何も知らないボクに外の世界のこととかいろいろなことを教えてくれた。

ボクはおじいちゃんのことが大好きだった。

そんなおじいちゃんが病気で倒れて『ワタシはもう長くないアル。』って言った。

その意味はよくわからなかったけど、おじいちゃんがボクの前からいなくなることはわかった。

そんなのイヤだ!!

ボクがそんな顔をしていたら、おじいちゃんが『ビビ・・・悲しむことはないアル。これは誰にでも訪れるものアルよ。』って教えてくれた。

それから間もなくだったおじいちゃんが死んだのは。

おじいちゃんの顔はとても穏やかに眠っているように見えて、今にも目を開けてくれるんじゃないかって思った。

そしたらなぜかボクの胸がとても締め付けられて目から涙があふれてきた。

これが『悲しい』ってことなのかな?

『悲しむことはない。』っておじいちゃんが言ったからガマンしようとしたけどムリだよ。

ボクは何日も泣き続けた。

もう一度おじいちゃんに会いたかった。

そしたら昨日の夜、ボクの夢の中におじいちゃんが出てきた。

おじいちゃんはボクにこう言った。

『ビビ、元気を出すアルよ。』

「ムリだよ。ボクはおじいちゃんがいなかったらなんにもわからないよ。」

『ビビ、外の世界に出るアル。外の世界に出ればワタシがいなくても大丈夫アルよ。』

「外の世界? トレノのこと?」

『トレノだけが外の世界じゃないアル。もっと広い世界のことアルよ。』

そこでボクは夢から覚めた。

外はもう朝になっていた。

ボクはおじいちゃんが貯めていたお金を持って初めて一人で外の世界へ飛び出した。

おじいちゃんが最後に教えてくれた『外の世界』。

どんな世界だろう。

考えるだけでなんだか元気がでてきた。

おじいちゃん、いってきます!!
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