FINAL FANTASY \ PLUS
一章 (1)
この日、アレクサンドリアの城下町は朝から賑わいを見せていた。
未だ復興途上であるため、昨年までのようなお祭り騒ぎとまではいかず、お芝居の上演も行われないが、誰もが王女の誕生日を祝っていた。
大戦後、ガーネットは国の復興に勤しんだのだった。
故ブラネ女王がこの数年間行ってきた政策を全て見直し、悪法を全て廃止にした。
また、トットと同様に追放されていた家臣を再び登用するなど、国の復興と繁栄に必要な人材の確保にも努めた。
ガーネットにとってありがたかったのは、王女の苦労を知った臣民が一致団結し、力を惜しまずに復興に尽力してくれたことだった。
国民にとって、ガーネットはアレクサンドリアの希望そのものだったのである。
その結果、城は未だ修復中であったが、城下町は以前の姿を取り戻しつつあった。
人々にも明るい笑顔が戻ってきた。
国家としての機能も多少は回復し、悪化していた治安も改善された。
資金面は、城の瓦礫の下に埋もれていた財宝や、あの旅の中で手に入れた珍しい装備品や宝石を全て売り払うことで賄うことができた。
リンドブルムとブルメシアとの国交も数度にわたる話し合いの末に回復した。
後は、新しい女王の即位を待つのみだった。
ガーネットは、未だアレクサンドリア王国第17代女王に即位せずにいたのだった。
王女であるうちに全てを終わらせ、名実ともに新しい時代を迎えんと彼女が強く望んだがためである。
そのため、誕生日であるこの日に即位するのではないかとの噂も立ったが、王室側は大戦が始まった日に即位するのは不吉であると、それを否定した。
人々の心は浮かれていたが、ガーネットの心は重く沈んだままだった。
スタイナーやベアトリクスには分かっていた。
彼のことをずっと想い続けているからだと。
それでも、近頃はほんの少しだけ感情のこもった笑顔を見せるようになっていた。
帰還してからしばらくは、凍りついた微笑みしか見せなかったのだ。
これは、彼女が悲しみを乗り越えようとしている兆しであった。
昼過ぎ、ガーネットの誕生日を祝いにリンドブルムから賓客が訪れた。
その人物とはエーコ・ファブールだった。
彼女は、大戦後間もなくシド大公の養女となり、リンドブルムの公女として迎え入れられたのである。
エーコはすぐにでもガーネットに会いたがったが、会議中であったため客室で待たされることになった。
しばらくして……。
「ダガーったら、いつまでレディーを待たせるつもりなのかしらっ!?」
エーコはむくれていた。
会議が予想以上に長引いていたのだった。
そのため、代わりにスタイナーとベアトリクスがエーコの話し相手をしていた。
「エーコ様、申し訳ありません。もう間もなくお出でになられるかと……。」
ベアトリクスがエーコを宥めた。
「どうかしら? どうせエーコのことなんかすっかり忘れて、ジタンとイチャイチャしてるんでしょっ!」
エーコは可愛らしい頬をぷぅっと膨らませた。
その時、それまで女性同士の話についていけなかったスタイナーが初めて口を開いた。
「……エーコ殿。今、なんと?」
「なにって、ジタンとダガーがイチャイチャして―――」
そこまで言いかけて、エーコは初めて二人の不思議そうな表情に気付き、驚いた様子で訊ねてきた。
「……ひょっとして、ジタン、まだ着いてないの?」
この後、二人はエーコの口から衝撃の事実を知ることになる―――