Gaia Times
1802年 1月16日
≪月の大戦≫特集(1)
 昨年の1月15日の深夜に発生したガーネット姫の失踪、2月9日の夜にリンドブルムを襲撃した未知の魔物の群れ、そして12日の夜、赤い月に出現した二体の巨大な召喚獣の死闘と、そのうちの一方を貫いた無数の光の矢。なんと、これらの事件が実は一つに繋がっていたことが判明した。そこで本紙では徹底した取材や目撃者の話を元に、今日まで公にされることのなかった出来事の全てを今日から三回に分けて特集を組むこととした。(敬称略) 
ガーネット姫の失踪
 1801年1月15日深夜、イーファの樹で行方不明となったジタン・トライバルを捜しに行くという直筆の手紙を残し、ガーネット姫が城から忽然と姿を消した。正午にアレクサンドリアに来訪したエーコ・ファブール公女が、スタイナー隊長とベアトリクス隊長
(※1)にジタンの生存と彼がアレクサンドリアに来る途中で再び消息を絶ったらしいことを話しているのをドア越しに聞いてしまったことが原因であった。
 ガーネットは地下にあるガルガン・ルーに乗ってトレノへ向かい、そこで偶然、彼女と同じく恋人を捜しに故郷を出ていたブルメシアの女竜騎士フライヤ・クレセントと再会を果たす。
 一方、城側でもスタイナーとベアトリクスが後を追おうとしていたが、ガーネットがガルガン・ルーの連結変換レバーを壊していたために、チョコボを使用するほかなかった。

トレノ〜南ゲート
 フライヤと合流したガーネットはトレノで情報収集を試みたが、キング家の勢いが衰えたこと、クイーン家に泥棒が入ったこと、ビショップ家がアレクサンドリアに資金援助を申し出たこと、ナイト家が武器屋を廃業したこと以上の情報は得られず、もしやリンドブルムに引き返したのではないかと考え、翌朝はダリ村、その後南ゲートからリンドブルムへと向かうことに。
 ダリ村では、初めてジタンの手がかりを得ることができた。宿屋の主人の話によると、彼は12月16日に宿泊したが、夜半過ぎに彼が泊まっている部屋の中から暴れているような物音と苦しそうな呻き声が聞こえてきた。心配した主人がドアを叩くとその音はピタリと止み、中からジタンの声で
「心配ない。悪い夢を見てうなされただけだ」と返事があったため、主人は一応安心して自室に戻った。翌朝、ジタンは村を後にしているが彼が泊まった部屋の中は枕や本がメチャクチャに散乱しており、さらに前日チェックインした時には大事そうに所持していた短剣を忘れたままだった。
 その翌日、ジタン愛用の短剣を腰に差したガーネットとフライヤは南ゲートに到着し国境を越えた。山頂の駅ではシド大公の従弟であるエディー・ファブール公爵
(※2)の姿を目撃し、見つかれば城に連れ戻されてしまうのではないかと思ったガーネットは物陰に隠れて彼をやり過ごす。
 同じ頃、トレノに到着したスタイナーとベアトリクスはガーネットの行方を捜すため酒場やトレノ四大貴族の家を訊き回り、彼女がすでに街から立ち去ったことを知ると、すぐに南ゲートに向かったが、前々から王室の支配を目論んでいたキング家の主人は、アレクサンドリア王女、そして軍事の中心人物の二人をこの絶好の機会に亡き者にしてしまおうと、密かに刺客を雇い始める
(※3)
 その夜、嵐にも拘らずキング家を一人の男が訪れ、その後間もなく屋敷から不気味な光が洩れ出しているのを近隣の住民が目撃する。

彼の短剣を手に決意を新たにするガーネット王女
画:森の画家キコリ
ク族の沼〜リンドブルム
 19日、ガーネットはク族の沼でクイナ・クゥエンと再会し、その日はそのまま宿泊する。夜、トレノでは見るからに凶悪そうな男たち数人がキング家に入るのが目撃されるが、皆屋敷に入る前と出てきた後では目の色や雰囲気が別人のように変わっていた。
 20日、クイナを加えた姫の一行はリンドブルムに到着。クイナはすぐに食べ物を探しに人込みの中に消え、フライヤはシド大公やエーコに会いに行こうとするが、ガーネットは以前のように城に留め置かれることを恐れ、自分が来ていることをシドには黙っていて欲しいと頼み、自分はタンタラスのアジトで待っていると告げるとフライヤと別れた
(※4)
 ガーネットはアジトを訪れるが、皆外出しているらしく中には誰もおらず、今後どうするか思案に暮れていたところ、一部始終を見ていた一人の老婆に声を掛けられる。事情を説明すると、老婆はなんとジタンの行方を知っており、今朝方タンタラスの仲間たちと一緒にとある街に出かけたとのことで、ちょうどこれから孫に会いにその街へ行くところであったので、ガーネットは喜びのあまりフライヤに連絡することも忘れてそのままついて行ってしまう。
 その頃、フライヤはシドとエーコに面会し、ジタンがリンドブルムには戻っていないことを告げられ、さらに最近親切そうな老婆が若い女性や子供を騙して連れ去ろうとする事件が頻発していることを聞かされる。
ゾゾールの街(※5)
 ガーネットは街に到着するなり牢屋に入れられてしまい、その時になってようやく自分が騙されていたことを知る。元々捕虜を繋いでおくための牢であるため魔法も使えず一度は途方に暮れてしまうものの、ジタンなら最後まで決して諦めないと自分を奮い立たせて夜になるのを待ち、ゴミだらけの床から針金を見つけると、彼から教えてもらった方法で鍵を開けることに成功。逃走の途中で危うく捕まりそうになったものの、街の酒場で砦に連れ込まれた少女のことを耳にして駆けつけたサラマンダーとラニの助力により何とか脱出することができた。その後サラマンダーはガーネットに城に帰るよう促すが、彼女の強い決意を前に仕方なく旅に同行することに。そしてミコトなら居場所が分かるかもと考え、そのままフォッシル・ルーへと足を進める。
 一方、フライヤたちはリンドブルム城下町で姫を攫った老婆を捕まえて彼女の居場所を吐かせ、すぐさま兵士数十名と共にゾゾールへと向かうが、到着してみると街の人間は見るも無残な姿で殺されており、生存者はシャルルという幼い男の子のみという有様であった。さらにその時、別の部屋から兵士の悲鳴が聞こえてきた。その部屋の中には一人の男がおり、フライヤたちの姿を認めると
「これは丁度いい。この場で三人とも始末してくれる」と笑い、今だかつて見たことの無い禍々しい怪物に姿を変えて襲い掛かってきた。フライヤの槍技とエーコの魔法とクイナの奇策(?)により退治することができたものの、次の瞬間、突如エディー・ファブール公爵が姿を現し、「アドラメレクめ……。しくじったな」と舌打ちし、フライヤの問いにも答えることもなく、塵と化したアドラメレクの骸から●●ラツィ●を一枚取り出すと忽然と姿を消した。
 同じ頃、リンドブルム近くまで来ていたスタイナーとベアトリクスは10名ほどのならず者に襲われ戦闘となっていたが、剣でこの二人に敵う者などいるはずがなく男たちは次々と返り討ちに。ところがリーダー格のガリオンという男にとどめを刺そうとした時、彼の身体が突如光り輝いたかと思うと凶悪な怪物の姿に。怪物は『魔人ベリアス』と名乗り、その圧倒的な力と魔法で二人を追い詰めるが、二人の力を合わせることで発動する最強の魔法剣ホーリーによって消滅し、跡にス●●●ィオだけが残された。
フォッシル・ルー〜イーファの樹
 フォッシル・ルーの出口付近でガーネットたちは一人の男に追い付かれる。サラマンダーが男を撃退するが、彼の正体もフライヤやスタイナーたちを襲った異形の怪物の一人だった。そして『
地獄の宰相ロフォカレ』と名乗るその怪物にガーネットたちは苦戦を強いられるが、召喚魔法イフリートによってこれを倒す。しかし残された●●●ツィオが、以前手に入れた時とは異なる輝きを放っていることに一抹の不安を感じるのであった。
 22日、黒魔道士の村に到着するが幾つもの家屋が倒壊していた。再会したビビとミコトの話によると、数日前に巨大な蠅のような怪物が村を襲撃し、ビビの黒魔法により退治されたが、例によって一枚のステ●●ィ●が残されたとのことであった。
 翌日、ミコトのテレパシー
(※6)によりジタンがイーファの樹にいることが判明し、早速ビビも連れて出発する。途中のコンデヤ・パタ(※7)でもジタンの目撃情報を得ることができ、ガーネットの胸の鼓動は高鳴るばかり。そして、イーファの樹の樹上で遂にこちらに背を向けている彼を発見する。ガーネットは溢れる喜びと涙を隠しもせず彼の名を呼びながら駆け寄るが、振り向いた彼の第一声は彼女の心を粉々に打ち砕くのに充分であった。「なんだ、まだ生きていたのか。ハシュマリムの役たたずめ……」
 そしてジタンは唱えられないはずの魔法を放ってガーネットを吹き飛ばし、続いてビビ、サラマンダー、ラニにも重傷を負わせ、さらに息の根を止めようとガーネットの首筋に両手を―――≪続きは次号≫
※解説

※1
=大戦の後、ベアトリクスは戦争の責任を自分一人で負う形で将軍位を剥奪された。ガーネットは剥奪ではなく返上という形にしたかったらしいがベアトリクスが拒否したらしい。なお、この時スタイナーに将軍位を授与させてはという声もあったがスタイナーが頑なに固辞したこともあって立ち消えとなっている。
※2=リンドブルム大公シド9世の従弟。1768年誕生。公爵。父親は前リンドブルム大公シド8世の兄であったが、生来の病弱が原因でシド7世が廃嫡してしまい、そのため彼は現在の大公家に少なからず恨みを抱いている。しかし表立ってそれを口にすることはなく、領地であるキングエディ平原を中心に旅を続けていた。ちなみに、父親は1770年に飛空艇の墜落事故により死亡している。
※3=キングは二人が屋敷に来た時点で始末することを考えていたが、スタイナーの猛獣のような目つきと、ベアトリクスの氷のような殺気に怖気づいて断念したらしい。
※4=フライヤはガーネットの気持ちを尊重してリンドブルムまでは同行したが、今後のことを考えると、ここで国に戻るのがお互いのためだと決心し、シドに面会した時にガーネットと同行していたことを告白している。
※5飛空艇革命後に廃墟となっていた砦やその周囲に落ちぶれた貴族や犯罪者が流れ着いて形成された街の一つ。規模は小さく人口も100人ほどだが、これは住み着いている者の数であり、裏取引などのためにやって来る闇商人や盗賊団を含めるとこの倍にはなると言われている。周囲を“霧”に覆われていて街の全体図が掴めなかったことや、他の二国の動きを警戒するあまり、こちらの対策をおろそかにしていたことが街を大きくした原因である。
※6
=永遠の闇との戦いの直後、クジャがミコトとジタンに対して行ったものと同じだが、ミコトの場合は相手の場所を確認するのみで、まだ会話まではできない。
※7=通過する際、サラマンダーとラニが神前の儀を渋々ながら行った。前回は混乱に紛れて通過したのだそうだ。
ヒツジッチ先生による歴史講座(2)

 
イプセンとコリン
●今から数百年前に実在した冒険家とその親友。元はトレノの館で働いていたが、ある日イプセン宛に「家に戻れ」という内容の手紙が届いたことが原因で一緒に旅立つことに。その道中で交わされた会話は美談として戯曲にもなっている(作品を書いたのはエイヴォン卿という説が有力だが実際のところは不明)。後にイプセンは古城を発見するなどシド1世と並ぶほどの大冒険家として世界に名を馳せるが、コリンについては一切記録に残っていない。冒険家となる前に別れたのか、亡くなったのか、それとも架空の人物だったのか現在も判っていない。また、近年では『
コリン女性説』が注目を集めている。イプセンに対するコリンの言動や行動が友情という言葉だけでは片付けられないためらしい。









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