Gaia Times
1802年 6月11日
リンドブルム展’02 大賞決定!
 狩猟祭と並ぶ年一回の人気イベントであり、今年で52回目を迎える『リンドブルム展’02』が、劇場街に新しく建設されたキャルオル美術館で華々しく開催された。
 今年の大賞受賞者には城壁に絵画を描くことが許されるだけでなく、宮廷芸術家として城に登用されるというこの上ない特典が付いていることもあり、例年よりもレベルの高い作品がモグネットによって世界中から数多く寄せられた。
 そして厳正なる審査の結果、200を超える作品の中から今年の大賞に見事輝いたのは、アレクサンドリア在住のジタン・トライバル氏(18歳)の作品『わが愛しの姫君』であった。
 世界的に有名な画家で特別審査委員のR・Aちゃん(10歳)が「リルムより上手な絵を描く人初めて見たよ!」と大絶賛したことがポイントとなったらしい。
 なお、この絵は美術館内にそのまま展示される予定で、週内には一般の人々も自由に観覧できるそうだ。

今年の大賞作品『わが愛しの姫君』
作:ジタン・トライバル
意外な事実が判明!
 大賞を受賞したジタン氏だが、彼は決して絵が上手ではなく、むしろ人並み以下であったことが判明した。友人のブランク氏によると、ジタン氏は数年前に仲間の女性団員の似顔絵を描いたのだが、完成した作品はとても人間の顔には見えない出来栄えで、怒ったその女性団員から半殺しの目に遭ったことがあるそうだ。
(ちなみに、「おっ? どこのモンスターだ?」と言ってしまったブランク氏は3分の2殺しの目に遭ったそうだ)
 そのため、今回の事にはブランク氏を始め団員の誰もが驚きを隠せない様子で、「まさか、愛の奇跡か?」と口々に噂しあっていた。
審査結果
 今年の受賞作品は以下の通り。カッコ内は審査委員長からのコメント。

大賞 『わが愛しの姫君』 ジタン・トライバル
(我々審査員が時を忘れるほど見とれてしまった。それほどこの作品は素晴らしい!)

バースデイ賞 『たんじょうびおめでとう』 オーギュスト・リュート
(幼い姉妹の可愛らしい姿に魅せられてしまった)

ファンタジー賞 『旅路の華達』 フィンセント・ファン・タケオ
(他のイラストコンクールにも出品されただけあって、作品のレベルの高さに大変感動させられた)

アイデア賞 『大宴会』 パブロ・カナコ
(豪華なのはもちろん、本当に彼らの話し声が聞こえるところが素晴らしかった)

ビジュアル賞 『姫うたう』 エドガー・カリ
(美しくもどこか儚げに歌っている姿を見事に表現していた)

デザイン賞 『母性』 レオナルド・K・ヴィンチ
(神秘的な雰囲気と優しい色合いに心癒された)

ユーモア賞 『暗闇で入浴中の黒魔道士』 ウージェーヌ・アラズラム
(見た途端、思わず吹き出してしまった)

審査員特別賞 『サンタさんへ』 S・K・A
(これほど強烈で大胆な構図の絵は今まで見たことがない! しかも4歳の女の子の作品だということに驚かされた!)
 本紙記者には『大きなバツ印を付けられたクマの縫いぐるみ(らしきもの)と黒髪のお姫さまの絵』にしか見えなかったが、本当の芸術とはこういう物なのだろうか? なお、この絵はアレクサンドリア城から郵送されてきたらしいのだが、不思議なことに城には該当する女の子がいないらしい。
最終選考作品
 惜しくも受賞には至らなかったが、どれも審査員たちを唸らせた作品ばかりだった。カッコ内は絵の説明。

入選 『友達』 エーコ・ファブール
(小さなモーグリと、とんがり帽子の男の子)

入選 『浮気者』 ヒルダガルデ・ファブール
(ヒゲを生やしたヘッジホッグパイ)

入選 『化粧大魔王』 匿名希望
(某人気劇団の女性団員)

入選 『お仕置き』 ルビィ
(上の作品を描いた人物がズタボロになっている姿)

入選 『愛しの人』 ベアトリクス
(鎧を着たブリキのおもちゃ)

入選 『“霧”の朝』 ミケル
(“霧”が立ち込めていた頃のリンドブルムの風景)

入選 
『ボクらの村』 黒魔道士123号
(作者が暮らしているのどかな村の風景)

入選 
『森を歩けば』 黒魔道士234号
(ふくろうも住まぬほど奥深い森の風景)
女王陛下の作品は落選
 今回はアレクサンドリアのガーネット女王陛下もご自分で描かれた絵を応募されたが、惜しくも落選していたことが判った。作品名は『母の肖像』だったそうで、どうやら審査員の目に触れられることなく落選させられたらしい。
 なお、女王陛下はそのショックで現在寝込んでいる。作品によほど自信があったらしい。

 この他にも審査されることなく落選となった作品があった。
1:ブルメシアのフラットレイ氏は何も描かれていないキャンバスを送ってきた。どうやら絵の描き方を忘れてしまったらしい。

2:アレクサンドリアのクイナ・クゥエン宮廷料理長はキャンバスの欠片を送ってきた。描く前に食べてしまったようだ。

3:トレノ在住のとある貴族の青年は『究極美』というほとんど裸の自画像を送ってきた。審査される前に満場一致で落選が決まった。
【速報】
 先程、ジタン氏が宮廷芸術家の地位を剥奪されたという情報が入った。信頼できる情報筋によると、ジタン氏が城壁に描いた絵が3歳児並の幼稚な出来栄えであり、念のために世界を救った八英雄の絵を描かせてみたところ、ガーネット女王陛下以外の人物絵はとても見られたものではなかったからだそうだ。どうやらジタン氏は女王陛下の絵を描く時のみ神がかり的な芸術性を発揮するらしく、やはり大賞を獲得できたのは『愛の奇跡』だったようだ。
 なお、ジタン氏はそのショックで現在寝込んでいる。女王陛下との結婚が遠のいたためらしい。
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